健康診断の結果を受けて「コレステロールや中性脂肪といった脂質に注意してください」と言われたことはありませんか?
脂質検査は、血液中のLDL-コレステロール・HDL-コレステロール・総コレステロール・中性脂肪を測定し、脂質異常症などがないかを調べます。
脂質異常症は自覚症状がないため結果を軽視しがちですが、血液中の脂質バランスが崩れた状態が続くと血管に損傷を与え動脈硬化の原因ともなります。
要精密検査・要治療と診断された方は、なるべく早く医療機関を受診しましょう。
コレステロールや中性脂肪はそのままでは血液中に溶けることができません。そこで、水に馴染むためにタンパク質と結合して「リポタンパク」という複合体粒子になり血液中を移動します。言わばリポタンパクは血中脂質の運搬役になります。
コレステロールと関わるリポタンパクにはVLDL、LDL、HDLがあります。
「LDL(低比重リポタンパク)」には、肝臓で作られたコレステロールを全身へ運ぶ働きがあります。このLDLに含まれるコレステロールを「LDL-コレステロール」と呼んでいます。
LDLが増えると、血管壁に溜ってしまいます。溜ったコレステロールが動脈硬化の促進要因になることから「悪玉コレステロール」と呼ばれています。
・基準値 65~140mg/dl (*樫本病院の基準値 施設や学会等により基準値設定の違いがあります)
【基準値から外れた場合に考えられること】
脂質異常症、動脈硬化、腎臓病、肝硬変
HDLに運ばれているコレステロールを「HDL-コレステロール」と呼びます。
HDLには、血液中や動脈の壁に付着しているコレステロールを回収して肝臓へ戻す働きがあり、「善玉コレステロール」と呼ばれています。
HDLが少なすぎると動脈の壁に付着しているコレステロールを回収しきれずに、動脈硬化を起こし、やがては血液の通り道を塞いでしまうことがあります。
・基準値 男性 40~90mg/dl 女性 40~103mg/dl
(*樫本病院の基準値 施設や学会等により基準値設定の違いがあります)
【基準値から外れた場合に考えられること 】
脂質異常症、動脈硬化、腎臓病、肝硬変、糖尿病、甲状腺機能異常症
血液中に含まれるすべてのコレステロールを測定した総量を「総コレステロール」と言います。
コレステロールは、細胞を包んでいる細胞膜の成分です。細胞は細胞膜を介して栄養分のやり取りをしているため、コレステロールが不足すればこの機能がうまく働かなくなってしまいます。また、コレステロールは、ホルモンや胆汁酸、ビタミンKの材料になっており、健康維持に不可欠なものです。
・基準値 142~220㎎/dl(*樫本病院の基準値 施設や学会等により基準値設定の違いがあります)
【基準値から外れた場合に考えられること】
脂質異常症、栄養吸収障害、ホルモンの病気(甲状腺機能亢進症・甲状腺機能低下症・下垂体機能低下症など)
中性脂肪は体内にある脂肪の一種です。食事から摂取されたエネルギーの一部は、中性脂肪としていったん体内に貯蔵され皮下脂肪や内臓脂肪となり、体温保持や体を守るクッションの役割を果たします。
普段は、体を動かすエネルギー源として糖質が使われていますが、糖質が不足すると蓄えられていた中性脂肪で補助します。しかし、使われなかった中性脂肪が増えすぎると動脈硬化の原因になります。
・基準値 男性 40~149mg/dl 女性 30~149mg/dl
(*樫本病院の基準値 施設や学会等により基準値設定の違いがあります)
【基準値から外れた場合に考えられること】
脂質異常症 動脈硬化 肝硬変 膵炎 低栄養
検査室
臨床検査技師 林 貴明